満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:39 一日だらだら人間「1999年67歳」
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満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:39 一日だらだら人間「1999年67歳」
85歳の母親が書く、満州引揚者の半生
・母親が出版した「縁と運」の概略
(2013/8/1 初版)
朝日新聞の読者投稿欄の「ひととき」と「声」に投稿し、掲載された70編を「縁と運」と題して出版した。
本には、林恭子の生き方や思いが人生の縮図として描かれている。
・この本の問い合わせ
絶版につき受付終了
この本に関しては、私、林 宏(息子)に問い合わせて頂きたい。
連絡先(090・6613・4068)へ。
39 一日だらだら人間「1999年67歳」
今年初め、ニューヨークのカーネギーホールで開かれたチャリティーフェスティバルに出演し、手品を披露しました。
このあとシアトルに移動し、地元の日系人と共演。
翌日は敬老ホームを慰問して帰国しました。
それからもう2週間が過ぎたのに、困った部分に気力が戻ってきません。
極度の緊張で身も心も疲れ果てたようです。
そんな状態のある日、実家の墓参りをしようと、社会人の孫娘をお供に、東京へ出かけました。
新幹線に乗るとすぐ、コーヒーとサンドイッチを求めました。
すると孫が、「ハイ、お手ふき」。
アメリカの土産話しをベチャベチャしゃべりまくっても、熱心に、「えーそうなの」。
使った傘はちゃんとビーニルの袋に入れてくれる。
降りる駅はお任せ。
階段も彼女の腕にしがみついてヨタヨタ降りる。
自動販売機の前で釣り銭が出ないと騒いでも、どこかのボタンをさっと押してくれました。
さらに大変だったのが帰りの東京行。
特急券と乗車券を手に自動改札の前で右往左往する私に「おばあちゃん、二枚重ねたままでいいのよ」と助け舟。
「エーッ」と私はまだ通れない。
そばにいた駅員さんが「大丈夫ですよ」。
孫はそれでも恥ずかしがることなく「さあ、行こう」と腕を組んで通過しました。
列車に乗って席に着くと、今度は「眠たい」という私に「いいよ、起こしてあげるから」と。
あー、今日は1日、だらだら人間できてよかった。
おかげであすから気力を取り戻して働ける。
私はゆっくり目を閉じました。