満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:29 還暦の元日マラソン「1992年60歳」
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満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:29 還暦の元日マラソン「1992年60歳」
85歳の母親が書く、満州引揚者の半生
・母親が出版した「縁と運」の概略
(2013/8/1 初版)
朝日新聞の読者投稿欄の「ひととき」と「声」に投稿し、掲載された70編を「縁と運」と題して出版した。
本には、林恭子の生き方や思いが人生の縮図として描かれている。
・この本の問い合わせ
絶版につき受付終了
この本に関しては、私、林 宏(息子)に問い合わせて頂きたい。
連絡先(090・6613・4068)へ。
29 還暦の元日マラソン「1992年60歳」
痛めた膝が願うほどに回復しないし、暮れの仕事に追いまくられてトレーニングもしていない。
ひどく不安だったが、元日マラソンだけはどうしても参加したい。
もし走れなければ歩いてでもと、とにかく会場へ出かけた。
まだ空は暗いが、風もなく上天気。
自転車のペダルを踏みながら、やっぱりトシかなあ、と思ったが、「いやトシのせいにしてはいけない。六月が来て、やっと60歳なんだから」
神社につくと、かがり火が、あかあかと燃えている。
思わず「ああ、来てよかった」と言ってしまった。
すかさず「あんたが来なきゃはじまらないよ」と言ってくれた人がいて、いっそう感動した。
欠かさず参加して今年は15回目だ。
歩くのを覚悟して一足先に出発したけど、どんどん抜かれる、あせる、しかしゆっくり行こう。
往復7キロ、折り返し点は安祥城跡八幡宮。
初日の出にまれる間に合えばいいと、もう遠くなった人影を迫って走る。
やっとたどり着いた境内に、ぞくぞくと、マラソン仲間が集まってくる。
「今年はオリンピックの年。安城市にとっても、市制40周年の節目の年であります」と、主催者の挨拶。
私は心の中で「そして自分自身の節目でもある、還暦の年です」と付け加えた。
やがてご来光を。
今年の初日の出は、心なしか、ひとまわり大きく感じた。
折り返しの道を走りながらふと気がつくと、心配した膝はなんともなかった。
ビリだったけどゴールイン。
「がんばったね」の声に迎えられて胸一杯。
還暦の元日マラソン、完走できてよかった。