満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:20 ひげのないサンタさん「1987年55歳」
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満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:20 ひげのないサンタさん「1987年55歳」
85歳の母親が書く、満州引揚者の半生
・母親が出版した「縁と運」の概略
(2013/8/1 初版)
朝日新聞の読者投稿欄の「ひととき」と「声」に投稿し、掲載された70編を「縁と運」と題して出版した。
本には、林恭子の生き方や思いが人生の縮図として描かれている。
・この本の問い合わせ
絶版につき受付終了
この本に関しては、私、林 宏(息子)に問い合わせて頂きたい。
連絡先(090・6613・4068)へ。
20 ひげのないサンタさん「1987年55歳」
「クリスマス会に手品をやって」と、子供会に頼まれたので、格好もそれらしくしようと、サンタの服作りを思い立った。
型紙などないから、目分量で裁断し、帽子をかぶってみて、ちょっと長いな、チョッキンてな具合で何とか出来上がった。
さて当日、手品の方はちょっと失敗もあったが、サンタの服装に助けられてか、拍手のうちに終わることができた。
それから二日後の二十四日は、私の店のクリスマスセール。
そこでせっかく作ったのだから宣伝のためにと、赤い服をお店せで着ていると、サンタを見たいと、親にせがんで連れて来てもらった小さい子があった。
それでふと、「そうだ、町じゅうの保育園の子たちに、サンタを見せてあげよう」と思いついた。
桜井の町には四つの保育園があって、約350人の園児がいるが、手ぶらではつまらないかと思い、一粒ずだけどプレゼントするお菓子(チョコレート)を持って、車で回ることにした。
途中、すれ違う人がびっくりした顔で見るので、いささか恥ずかしかったが、園に着いて子供たちの「わあー」という声を聞いたら、そんなことは忘れてしまった。
予告をしない突然の訪問だったので、先生方は驚かれたが、子供たちは「サンタクロース」を喜んでくれた。
ところが、二つ目の保育園で、誰かが「サンタじゃないよ、だってひげがないもん」と言ったので、これには困ったが、「あのね、おばさんでしょ、だから、おひげがないの」「あ、そうかあ」と納得してくれて、やれやれ。
全部回り終ったときは、折からのほポカポカ陽気もあって汗びっしょり。
サンタの衣装作りも大変だったけど、こんないい思いができたのだから満足でした。