満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:03 「善意」と「偽善」の間(はざま)で
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満州引揚者:林 恭子:『縁と運」:03 「善意」と「偽善」の間(はざま)で
85歳の母親が書く、満州引揚者の半生
・母親が出版した「縁と運」の概略
(2013/8/1 初版)
朝日新聞の読者投稿欄の「ひととき」と「声」に投稿し、掲載された70編を「縁と運」と題して出版した。
本には、林恭子の生き方や思いが人生の縮図として描かれている。
本の題名は、読者がこの本に出会であろう「縁」と、読んでみようとページを開いてくれる「運」から命名した。
・母親の略歴
東京で生まれた。
父が大型バイク「ハーレーダビッドャ刀v社の奉天(現・瀋陽)支店長だった。
このため3歳から一家で奉天へ移り住んだ。
戦後、14歳で旧満州から引き揚げ、16歳で結婚し、手作りで焼いたパン店を開業。
・この本の問い合わせ
絶版につき受付終了
この本に関しては、私、林 宏(息子)に問い合わせて頂きたい。
連絡先(090・6613・4068)へ。
03 「善意」と「偽善」の間(はざま)で「1981年49歳」
有線放送の録音テープが回り、どうぞ、のサインがあって私はマイクに話しかけます。
ーー皆さまにお願いです。
いつもこの有線を通して放送させていただいております「おしめづくり」ですが、今年も、お願いしたいと思います。
ところで一つのことを長く続けていますと、「ああ、またか」というような思いがします。
じゃあ、やめるのかというと、それはいけない、という気もします。
やはり、おしめがどんなに必要であるか、身にしみて感じていないからだと思います。
一昨年、皆様からいただいた、おしめの送り先、島田療育園を訪ね、重い障害に耐えて、必死に生きている子供たちを見ました。
今は決して暮らしやすい世の中ではありません。
私たちも生きいくために、いやだ、と思うこともやらなければなりません。
しかし、この子どもたちのこと思えば、なんとたやすい辛抱ではありませんかーー
こうして寄せていただいた「おしめ」は、毎年何百枚にもなりますが、私には、毎年心を痛めることがあります。
それは、私が商いをしているので「連絡は○○店へ」と放送することなのです。
人の善意を集める行いに、たとえ皆さんにわかりやすいからといっても、店の名前を出すなんて、売名行為のようで、気がとがめてなりません。
もし、そのような意図が少しでもあれば、私の行いは善ではなく偽善でありましょう。
けれど正直にいって、他人にほめられることを、少しは期待している気持があるのも事実です。
こうして、善と偽善の間に挟まって、苦しい思いをしておりますので、神様、どうぞ私の罪をお許しください。